

clubasia 29th Anniv. "Epoch" party report
text:
NordOst
2025/04/13


clubasia 29th Anniv. "Epoch" party report
text:
NordOst
2025/04/13


clubasia 29th Anniv. "Epoch" party report
text:
NordOst
2025/04/13
Text / Edit by NordOst
Photo by Toshimura
DJ・NordOstとしても一人の客としても、自分が好きな空間はあくまで小箱。だけどもちろん、大箱にも細部まで血の通った、温かい場所もあることも知っている。clubasiaはそういう場所だと思う。
「asiaって大きな小箱なんですよ」と、こないだ友人のAki DolanikovというDJが立ち飲み屋でぼそっと、だけど嬉しそうに呟いていたことが頭に残っている。
大きな小箱。clubasiaを表現するのにこれほどスッと入ってくる言葉もあまり無いように思える。世界を見渡せば30年弱営業を続けているクラブはいくつもあるだろうし、日本国内にも当然あるだろうけど、東京に限って言えばそんな場所は数えるほどしかない。
でも、老舗であること、歴史の重みを(良い意味で)感じさせないのがasiaのユニークなところでもある。「すべての音楽を受け入れる」をコンセプトに、時にはポップに、時には派手に、時にはディープに。古今東西の音楽が行き交い、さまざまなジャンルやシーンが共生するclubasiaという場所の29周年パーティーは、週末だけでも計11本開催された。
その中でも100%自社制作の、#clubasia29th のメインを飾るにふさわしいパーティーが、DAY.9 “Epoch”だった。その様子をつぶさに書き残してみる。


オープンして間もないころに足を運ぶと、エントランスに長蛇の列が。clubasiaのいつもの光景。少し並んでから入ってすぐ、元々下北沢CREAMでスタッフとしても活躍していたyumip氏のDJセットでバーカウンターの空気がほのかに上気していた。ハレとケの両方をよく知るプレイヤーがいないと、盛大なハレの日は作れない。こうした采配ができる大箱っていったい何箇所あるだろう、とか思いながらビールをいただく。


ほどなくして2Fフロア・メインフロアがオープンし、人の流れに動きが見えはじめる。3つのブースを持つclubasiaならではのこうした光景は、パーティーが生き物であることを強く思い出させてくれるなあ、などと思いながら早速ビールを飲み干してウーロンハイを頼む。毎回、asiaに来るとつい場に乗せられて普段よりペースが早まる。不思議。
2Fとメインフロアの通り道から、Age Factoryを前に一気にギアを上げるFUJI TRILL氏のDJセットを遠巻きに眺めていると、バンドの登場を待ち望む人たち、フロア横のDJブースに食らいつく人たち、ただ踊る人たち、それぞれが折り重なって見える。決して一枚岩でなくさまざまな層が行き交う様子は、小箱にはない特有のものだなと改めて気づく。自分はこういう同一化しない共生関係みたいなものが結構好きだ。あれ、大箱、嫌いじゃないかも……なんて思いつつ2Fに移動する。



2Fフロアの前半からピークタイムまでを支えるSEKITOVA・FELINE・okadadaの3名は、それぞれが突出した固有の世界観を備える無二のプレイヤーでありながら、丹念にフロアを観察して細かにニュアンスを変えていく。個々が、というより流れる時間そのものが心地良くて、しばらく釘付けになって踊った。



VJのCamel氏率いるレーザーのオペレーションもあまり見たことのないタイプのアプローチで、そこかしこに乱反射する光はDJブース直下にも注がれていた。妖しげで綺麗だった。この日のFELINE氏のプレイがかなり最高で、ヒプノティックに低空飛行を続けているうちに、気づけば上空まで連れていかれてしまうような体験になった。時折レーザーとも協奏しているように錯覚させる展開に、心身ともにかなり揺さぶられた。それでもまだ2番手。凄すぎる!
そうした合間合間にラウンジの様子を観に行ったり、メインフロアの人波に揉まれてみたり、テキーラやシャンパンをおもむろにいただいたり。asia名物の赤いプラスチックのシャンパングラスはキッチュで可愛くて結構好きだったりする。それにしても、次から次へとボトルが空く。景気が良い!



時間の経過とともに、各フロアの観客はそれぞれバーカウンターや別のフロアを行ったり来たりしつつ、徐々に総量が増えていく。メインフロアに至ってはすでに満員に近づきつつあった。やっぱり景気が良い!


と、このように一部の光景を私的な目線から切り取っても、3つのフロアにはまったく違う景色が広がっていて、一晩のタイムテーブルのなかにいくつもの選択肢があることがわかる。それは間違いなくクラブという空間固有の体験だと思う。ステージの引力に身を任せてもいいし、あちこちふらふらと徘徊してもいいし、久々にバッタリ会った人たちと話し込んでいるだけでも楽しい。
そう、クラブはなんだか楽しい。この「なんだか」が大事だと思う。うろ覚えだけど、高校生ぐらいの頃に読んだ中島らものエッセイに「腹がよじれるほど笑った夜のことほど次の日にフッと消えてしまう」みたいな一節があった気がする。
音楽と人の交歓がフィードバックを続けた結果、空間全体にきわめて揮発性の高い楽しさが充満していって、酩酊したりトランスしたりする。クラブ遊びというレジャーが我々に与えるのはそんな感じの体験だから、パーティーレポートを書くという行為にはちょっとした背徳感がある。無粋だし後ろめたい、けど、残したい……みたいな葛藤も後々振り返ると、ただ単にそのとき酔ってただけだったりするんだけど。


ところで、このパーティーに名付けられた「Epoch」というタイトルのことを辞書で引くと、「画期的な出来事」「重要な事件」といったニュアンスを指しているそう。それは後々その時代を振り返って決められる……とのこと。そうした意味合いにぴったり当てはまる存在が、今夜は(少なくとも)ふたりクレジットされている。もちろん石野卓球氏と¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U氏のことだ。そんな両者がメインフロアの終盤2ブロックで交差する。


卓球氏の90分セットのすさまじい安定感のなかにはサービス精神、挑戦、実験、発見、ユーモア、音楽愛……と、いろいろな要素が折り重なっていて、奇妙なバランスでそれぞれが調和していた。続く行松さんはそうした流れを巧みに掴み、シームレスに自分のカラーへ染め直していく。自分も毎週どこかしらでDJをやっているから、昔観たときよりは何がどうなっているかある程度は分かるだろうな、と高を括っていたけど、すみません、まだまだ先は長いようです……。しかも、メインフロアはパンク寸前で、卓球・行松観たさに3時、4時を過ぎてもエントランスにはお客さんが次々と押し寄せる。自分にはまさしくエポックメイキングな光景に見えるけど、両者にとってはこれが通常営業だろうと思うと笑えるし、笑えない。黙々と対応したり、バタバタと駆け回ったりしているスタッフ陣は大変そうだけど楽しげに光っていた。


メインフロアはもちろん、セカンドフロアのクローズを務めたこの日のTYO GQOMも相当すごかった。満員電車のようなメインフロアを横目に、こちらにも徐々に人が押しかけ場のボルテージが際限なく上昇し続ける。個人的には、asiaの2Fのサウンドシステムはかなりパンチが強い気がしていて、時にはピーキーすぎるように感じることも無くはないけれど、まさかGQOMがここまで大ハマリするとは思わなかった。高火力なシステムにはパワフルで重心の低いトラックが合う。とくにGQOMの場合、バウンシーな感覚が一貫してあるから浮遊感と重厚感が両立する矛盾が成り立ってしまう。重いのにハネる。重力を忘れたり感じたりしながら楽しめた。


そろそろ終盤かな、と思いメインフロアに戻ると、ライトアップまでされているのにフロアには「ワンモア!」の声が止まらない。微笑みながら一回一回全力で答える行松さんが世界から愛されるわけだ。最後の最後にクイーンとデヴィッド・ボウイの「Under Pressure」がかかって、数十年残り続ける曲の普遍的な良さに面食らった。ええ曲や……。
そうして29周年を祝う「Epoch」は終わった。たっぷり一晩いろいろ見回れたことだしそろそろ荷物を取りに行こう、と2Fに戻ったら……TYO GQOM、まだやってました。マジか、やっぱり終わらなかった……。これだから、asiaって!


Photo by Toshimura
Text / Edit by NordOst
Photo by Toshimura
DJ・NordOstとしても一人の客としても、自分が好きな空間はあくまで小箱。だけどもちろん、大箱にも細部まで血の通った、温かい場所もあることも知っている。clubasiaはそういう場所だと思う。
「asiaって大きな小箱なんですよ」と、こないだ友人のAki DolanikovというDJが立ち飲み屋でぼそっと、だけど嬉しそうに呟いていたことが頭に残っている。
大きな小箱。clubasiaを表現するのにこれほどスッと入ってくる言葉もあまり無いように思える。世界を見渡せば30年弱営業を続けているクラブはいくつもあるだろうし、日本国内にも当然あるだろうけど、東京に限って言えばそんな場所は数えるほどしかない。
でも、老舗であること、歴史の重みを(良い意味で)感じさせないのがasiaのユニークなところでもある。「すべての音楽を受け入れる」をコンセプトに、時にはポップに、時には派手に、時にはディープに。古今東西の音楽が行き交い、さまざまなジャンルやシーンが共生するclubasiaという場所の29周年パーティーは、週末だけでも計11本開催された。
その中でも100%自社制作の、#clubasia29th のメインを飾るにふさわしいパーティーが、DAY.9 “Epoch”だった。その様子をつぶさに書き残してみる。


オープンして間もないころに足を運ぶと、エントランスに長蛇の列が。clubasiaのいつもの光景。少し並んでから入ってすぐ、元々下北沢CREAMでスタッフとしても活躍していたyumip氏のDJセットでバーカウンターの空気がほのかに上気していた。ハレとケの両方をよく知るプレイヤーがいないと、盛大なハレの日は作れない。こうした采配ができる大箱っていったい何箇所あるだろう、とか思いながらビールをいただく。


ほどなくして2Fフロア・メインフロアがオープンし、人の流れに動きが見えはじめる。3つのブースを持つclubasiaならではのこうした光景は、パーティーが生き物であることを強く思い出させてくれるなあ、などと思いながら早速ビールを飲み干してウーロンハイを頼む。毎回、asiaに来るとつい場に乗せられて普段よりペースが早まる。不思議。
2Fとメインフロアの通り道から、Age Factoryを前に一気にギアを上げるFUJI TRILL氏のDJセットを遠巻きに眺めていると、バンドの登場を待ち望む人たち、フロア横のDJブースに食らいつく人たち、ただ踊る人たち、それぞれが折り重なって見える。決して一枚岩でなくさまざまな層が行き交う様子は、小箱にはない特有のものだなと改めて気づく。自分はこういう同一化しない共生関係みたいなものが結構好きだ。あれ、大箱、嫌いじゃないかも……なんて思いつつ2Fに移動する。



2Fフロアの前半からピークタイムまでを支えるSEKITOVA・FELINE・okadadaの3名は、それぞれが突出した固有の世界観を備える無二のプレイヤーでありながら、丹念にフロアを観察して細かにニュアンスを変えていく。個々が、というより流れる時間そのものが心地良くて、しばらく釘付けになって踊った。



VJのCamel氏率いるレーザーのオペレーションもあまり見たことのないタイプのアプローチで、そこかしこに乱反射する光はDJブース直下にも注がれていた。妖しげで綺麗だった。この日のFELINE氏のプレイがかなり最高で、ヒプノティックに低空飛行を続けているうちに、気づけば上空まで連れていかれてしまうような体験になった。時折レーザーとも協奏しているように錯覚させる展開に、心身ともにかなり揺さぶられた。それでもまだ2番手。凄すぎる!
そうした合間合間にラウンジの様子を観に行ったり、メインフロアの人波に揉まれてみたり、テキーラやシャンパンをおもむろにいただいたり。asia名物の赤いプラスチックのシャンパングラスはキッチュで可愛くて結構好きだったりする。それにしても、次から次へとボトルが空く。景気が良い!



時間の経過とともに、各フロアの観客はそれぞれバーカウンターや別のフロアを行ったり来たりしつつ、徐々に総量が増えていく。メインフロアに至ってはすでに満員に近づきつつあった。やっぱり景気が良い!


と、このように一部の光景を私的な目線から切り取っても、3つのフロアにはまったく違う景色が広がっていて、一晩のタイムテーブルのなかにいくつもの選択肢があることがわかる。それは間違いなくクラブという空間固有の体験だと思う。ステージの引力に身を任せてもいいし、あちこちふらふらと徘徊してもいいし、久々にバッタリ会った人たちと話し込んでいるだけでも楽しい。
そう、クラブはなんだか楽しい。この「なんだか」が大事だと思う。うろ覚えだけど、高校生ぐらいの頃に読んだ中島らものエッセイに「腹がよじれるほど笑った夜のことほど次の日にフッと消えてしまう」みたいな一節があった気がする。
音楽と人の交歓がフィードバックを続けた結果、空間全体にきわめて揮発性の高い楽しさが充満していって、酩酊したりトランスしたりする。クラブ遊びというレジャーが我々に与えるのはそんな感じの体験だから、パーティーレポートを書くという行為にはちょっとした背徳感がある。無粋だし後ろめたい、けど、残したい……みたいな葛藤も後々振り返ると、ただ単にそのとき酔ってただけだったりするんだけど。


ところで、このパーティーに名付けられた「Epoch」というタイトルのことを辞書で引くと、「画期的な出来事」「重要な事件」といったニュアンスを指しているそう。それは後々その時代を振り返って決められる……とのこと。そうした意味合いにぴったり当てはまる存在が、今夜は(少なくとも)ふたりクレジットされている。もちろん石野卓球氏と¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U氏のことだ。そんな両者がメインフロアの終盤2ブロックで交差する。


卓球氏の90分セットのすさまじい安定感のなかにはサービス精神、挑戦、実験、発見、ユーモア、音楽愛……と、いろいろな要素が折り重なっていて、奇妙なバランスでそれぞれが調和していた。続く行松さんはそうした流れを巧みに掴み、シームレスに自分のカラーへ染め直していく。自分も毎週どこかしらでDJをやっているから、昔観たときよりは何がどうなっているかある程度は分かるだろうな、と高を括っていたけど、すみません、まだまだ先は長いようです……。しかも、メインフロアはパンク寸前で、卓球・行松観たさに3時、4時を過ぎてもエントランスにはお客さんが次々と押し寄せる。自分にはまさしくエポックメイキングな光景に見えるけど、両者にとってはこれが通常営業だろうと思うと笑えるし、笑えない。黙々と対応したり、バタバタと駆け回ったりしているスタッフ陣は大変そうだけど楽しげに光っていた。


メインフロアはもちろん、セカンドフロアのクローズを務めたこの日のTYO GQOMも相当すごかった。満員電車のようなメインフロアを横目に、こちらにも徐々に人が押しかけ場のボルテージが際限なく上昇し続ける。個人的には、asiaの2Fのサウンドシステムはかなりパンチが強い気がしていて、時にはピーキーすぎるように感じることも無くはないけれど、まさかGQOMがここまで大ハマリするとは思わなかった。高火力なシステムにはパワフルで重心の低いトラックが合う。とくにGQOMの場合、バウンシーな感覚が一貫してあるから浮遊感と重厚感が両立する矛盾が成り立ってしまう。重いのにハネる。重力を忘れたり感じたりしながら楽しめた。


そろそろ終盤かな、と思いメインフロアに戻ると、ライトアップまでされているのにフロアには「ワンモア!」の声が止まらない。微笑みながら一回一回全力で答える行松さんが世界から愛されるわけだ。最後の最後にクイーンとデヴィッド・ボウイの「Under Pressure」がかかって、数十年残り続ける曲の普遍的な良さに面食らった。ええ曲や……。
そうして29周年を祝う「Epoch」は終わった。たっぷり一晩いろいろ見回れたことだしそろそろ荷物を取りに行こう、と2Fに戻ったら……TYO GQOM、まだやってました。マジか、やっぱり終わらなかった……。これだから、asiaって!


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